
1958年設立創業、2026年で68期目を迎えた伊那食品工業株式会社。伊那の地で寒天を使った商品づくりを続けてきた伊那食品工業は、おなじみ「かんてんぱぱ」の名で多くの方に親しまれています。今回は、同社が商品にかける思いと、3月に発売された新商品の魅力などを専務取締役の塚越さん、開発担当の伊藤さんにお聞きしました。

かんてんぱぱが伝えてきた、寒天の魅力
創業以来「寒天の魅力をもっと気軽に楽しんでいただきたい」という思いを大切にしながら、商品づくりを進めてきた同社。
かんてんぱぱシリーズが広く親しまれていますが、実は企業向けには、ゼリー化を目的としたゲル化剤や、とろみ付けに用いられる増粘剤も展開。寒天を長年深く研究してきた知見を生かし、全国の食品メーカーや地域の和洋菓子店へ向けて、さまざまな用途に使える寒天原料を届けています。
「かんてんぱぱ」が生まれたのは1980年。
寒天が一般家庭ではまだあまり馴染みのなかった時代に、もっと身近に感じてもらえるよう“かんてんぱぱ”という親しみやすい名前をつけてスタートしました。「お湯を入れて溶かして固めるなど、家庭で少し手を加えていただくことで、手作りの楽しさも味わってほしいと思い生まれたブランドです」と塚越さん。
200種類以上ある自社製品の中でも、同社を代表するロングセラーとなっているのが「カップゼリー80℃(エイティーシー)」。
「当時は、寒天をぐつぐつ煮て作るのが当たり前の時代だったのですが、80度以上のお湯を加えるだけでさっと溶けるという点がとても画期的だと喜んでいただいていたそうです」と伊藤さん。
「カップゼリー80℃(エイティーシー)」が発売されたのは1981年。ちょうど伊藤さんが生まれた年に誕生した商品なのだそう。
発売当初からある青りんご味やオレンジ味に加え、現在ではピーチ味やサイダー味なども仲間入りし、全12フレーバーをラインアップ。
「アレルギーのあるお子さまでも安心して食べていただけるように、また健康を意識した商品づくりを心がけています」(伊藤さん)

果実の専門家×寒天の専門家がつくった新商品
寒天を深く研究し、常に新しい商品を生み出している同社が、2026年3月に発売したのが「にんじんと4種の高原野菜と信州りんごmix」です(TOPの写真)。カゴメと共同開発した野菜・果実ミックスの飲料で、野菜とフルーツの自然な甘みやコクに、寒天由来のやさしいとろみが加わり、野菜が苦手なお子さまでも飲みやすい味わいに仕上がっています。
「野菜の専門家と寒天の専門家、それぞれの強みを生かして、市場にないものを作りたいと思ったんです。また、地域や生産者さん、そして社員に対する思いなど、理念が一致していたことも一緒に取り組みたいと思った理由のひとつでした」と塚越さん。
使用しているのは、長野県産のリンゴに加え、ホウレン草、レタス、セロリ、ビーツといった県内産の高原野菜。そこにカゴメの契約農家で育てられた国産ニンジンやトマトなどをブレンドしています。
さらに、飲みごたえを出すために特殊な寒天(下の写真)を加え、とろみをプラス。「寒天自体には味がないので、素材の味を邪魔せず引き立てられるのが強みです。お子さまでも飲みやすいよう、カゴメさんとそれぞれの強みを生かしながら、試行錯誤して共同開発した商品です」と伊藤さん。慌ただしい朝でも手軽に取り入れられるので、朝食に栄養をプラスする習慣としてもおすすめです。

広がり続ける、寒天の無限の可能性
多くの企業から「こんな商品を作ってほしい」という依頼が絶えない同社。馴染みのあるゼリー飲料をはじめ、「え、ここにも!?」と思うような商品にも同社の寒天が使われており、その数はもう数えきれないほどだといいます。
寒天は風味を変えずに濃厚な食感を出せるうえ、カロリーも低いためさまざまな現場で重宝されています。食品分野だけでなく、特殊なフィルムや医療の現場で役立つ素材として活用されているものもあるそうです。
「信じられないようなオーダーをいただくこともありますが(笑)、実用化できるように日々研究を重ねています」と伊藤さん。
自社商品も毎年新しいものを開発。デザートのイメージが強い寒天ですが、最近は“寒天麺”にも挑戦し、「寒天まぜそば うま辛担々風」というオリジナルの寒天平打ち麺を使った商品や、生パスタのような食感を実現した「寒天パスタ」など、新しい楽しみ方を提案しています。
こうした多彩な商品は、伊那市にある「かんてんぱぱガーデン」をはじめ、県内にある7つの直営店で購入することができます。

もうひとつ注目したのは、同社の関連事業「ぱなな農園」です。伊那市内の遊休農地を有効活用する取り組みで、ここでは、シニア社員の定年後の働く場として活用されているほか、農業に挑戦したいという若手社員が転向して参加するケースもあるそうです。
農園では、寒天製造の工程で生まれる“海藻残渣”を土づくりに活用し、海のミネラルを畑へ循環させる独自の取り組みも行っています。野沢菜、トウモロコシ、キュウリなど、季節ごとにさまざまな野菜を育てており、収穫した野沢菜は自社製品に活用されるほか、関連飲食店でも提供されています。
社員の幸せが、消費者の幸せにつながる――。
そんな“幸せの循環”を大切にする伊那食品工業からは、この先も新しい驚きが生まれそうです。
夏に向けて意外な新商品の発売も予定されているとのことで、今後の展開にも期待が高まります♪
■購入場所
県内7カ所の直営店、オンラインストア、一部商品はスーパー、ドラッグストアなど
■伊那食品工業株式会社
https://www.kantenpp.co.jp/corpinfo/