
1876年(明治9年)創業。岐阜県に本社を構える内堀醸造株式会社は国内有数の食酢製造会社です。創業時は、たまりしょうゆ、みそ、酢の製造を行っていましたが、1965年(昭和40年)より、食酢醸造を専業とし、現在では調味料から飲むお酢までさまざまな食酢を製造しています。今回のMust buyは内堀醸造の商品に注目!同社の酢づくりに対する思いなどをアルプス工場の工場長である杉江さんと唎酒師、海外すしアドバイザーという資格を持つ営業企画部の内川さんにうかがいました。

南信州は酢づくりの基盤がそろった最適な環境
アルプスの麓である長野県飯島町に位置するアルプス工場。
「自然豊かで酢づくりの基盤となる“水、空気、微生物”がそろった最適な環境だったので、2006年に工場を新設しました」と内川さん。
現在ではこちらのアルプス工場と岐阜にある本社工場の2拠点で800アイテム以上の食酢を製造しています。
もともとしょうゆやみそをつくる醸造会社からスタートした同社が、なぜ酢を専業とするようになったのでしょうか?
「初代の内堀が酢を好きだったこともあり、酢の専業になりました」
日本で最初のワインビネガーを醸造!
ワインビネガーとはぶどう果汁をアルコール発酵させワインにし、そのもろみを醸造し発酵させたもの。昭和40年ころの日本では、まだまだ一般的ではなかったワインビネガーに目をつけ、つくりあげたのが当時3代目社長、現監査役の内堀信吾さんでした。
「ワインビネガーを誰かに評価してもらいたいと東京の老舗高級ホテルのシェフに持って行ったところ、気に入っていただき採用していただいたと聞いています」。ちなみにそのホテルでは今でも変わらず同社のワインビネガーを使い続けているそうです。

伝統を守り革新への探求心は失わない酢づくりを
同社が創業当時から大切にしている基本理念です。米をアルコール発酵させ、酒のもろみをつくり、それを酢酸発酵させることで酢ができあがります。
「品質の良いお酢をつくるのには、良い酒づくりから。その理念を極めたのが『純米大吟醸酢』という商品です」(杉江さん)。
2017年に自社の精米機をダイヤモンドロール精米機に変更したという同社。
「ダイヤモンドで削るので、高精白のお米ができるんです。有名な日本酒もこのダイヤモンドロール精米機を使い日本酒づくりを行っているんです。当社も、せっかくこのダイヤモンドロール精米機があるなら、酒の品質にこだわりたいと、大学や醸造研究家の方たちとプロジェクトチームをつくり、まずは上質な酒のもろみづくりから取り組みました」
杉江さんのお話しからもわかるように、今でも変わらず伝統的な製法で酢づくりを行う一方で、技術革新への探求心は失わないため、さまざまな新商品が誕生しています。
また、安定した品質を保つために工場一貫生産で、管理も徹底。そのことが評価され、現在では某大手企業のマヨネーズに使われる酢をはじめ、生協の商品、スーパーのプライベートブランドなど、さまざまな商品も手掛けています。

米酢、果実酢、調味酢など充実のラインアップ
同社の主力商品でもある「臨醐山黒酢」は、国産の玄米をぜいたくに使い、穏やかな香りと柔らかな酸味が特徴です。また、プレミアムフルーツビネガー「信州りんごの酢」は、長野県産のふじりんごを使った飲むお酢で、アルプス工場ができた際に開発されたそうです。
「地元になにか貢献できることはないかと考えたときに、信州の特産品であるりんごをつかった果実酢をつくろうと考えました。りんごはほかの果汁に比べ香りがよいので、調味料とするより、飲むお酢にしたほうがいいだろうということでフルーツビネガーとして発売しました」
また、有名人が日常使いしていると紹介し売り切れ続出となった「美濃特選味付ぽん酢」は、利尻昆布と枕崎製造のかつお枯節からとった一番だしを使用。すだちとゆずの果汁が香るぜいたくな一品です。

「酢は塩と同様、人類最古の調味料といわれており、世界にはまだまだたくさんのお酢があるんです。これからもたくさんの酢をつくっていきたいですね。もちろん需要も大切ではあるのですが、売れる売れないというよりは、ものづくりを一生懸命やっている会社であり続けたいと思っています」(内川さん)
「長野県民のみなさまは減塩対策などにも取り組んでいらっしゃると思うのですが、酢を上手に使うことで、減塩になることってたくさんあるんですよね。我々のつくる酢で健康長寿に貢献できるのではと思っています」(杉江さん)
さまざまな健康効果が期待できるといわれる酢。内堀醸造の社員の方々に高血圧の人はとても少ないそうで、かなり効果的なのではといえそうです。長野県が誇る発酵食である酢で、心身ともども健康長寿を目指しましょう。
■内堀醸造株式会社
https://www.uchibori.com/