
野菜のおいしい長野県。もうすぐ春を迎えるこの季節、大自然のもとで育まれた新鮮野菜が直売所やスーパーなどにたくさん並び、食卓を彩ります。長野県は野菜の一大生産地なだけあって、生産量が多いぶん、規格外も多く、廃棄される野菜も多いのが実情です。
そんな現状を見かねて立ちあがったのが『彩(いろどり)』の竹内和恵さん。規格外野菜や廃棄される野菜を必要とされる場所へお届けするために、農家さんと消費者の橋渡し役を担っています。

地元産の規格外野菜を箱詰めしアプリに出品!
辰野町出身、もともとトラックの運転手だったという竹内さん。地元で農道を走るなか、畑にたくさんの野菜が捨てられている現状を目の当たりにしたそうです。
「まだまだ食べられるのにもったいないと思い農家さんに話しかけてみたんです。そこではじめて規格外野菜のことを知りました。中身は同じなのに、形や色が違うだけで商品にはならないということを」
そこで困っている農家さんと必要としている消費者をつなげる橋渡しができないかと考え行動にうつします。そこでタイミングよく出会ったのが信濃毎日新聞社の青木さんです。
青木さんは“信州から食品ロスを減らす” という目的で、スマートフォンアプリ「HELAS(ヘラス)」を開発。
「HELAS(ヘラス)」は、県内の飲食店、小売店などが売り手となり、型崩れのものやあまってしまう食べものなどロスになりそうなものを出品。買い手はアプリから出品情報を受け取り、リアルタイムで購入できるという画期的なアプリです。
ちょうど2024年7月、ヤマト運輸と提携し、規格外の野菜を直送するサービス「オンラインマルシェ」の運営を開始したばかりでした。
「青木さんとは、お互いの目的が同じだったので、すぐに意気投合しました。あれが今日出荷するダンボールなんですよ」といって見せてくれたのが下記の写真。箱いっぱいに野菜や果物が詰まっています。
「彩さんの野菜は大好評なので、出品するとすぐ売れるんですよ」と青木さん。
それもそのはず、ブロッコリー、にんじん、白菜、キャベツ、さつま芋など県内産野菜が10品ほど。おまけに静岡産のみかんも入って、送料込みでお値段なんと1,500円!
「静岡のみかんは、あっちの方向へ行く配送業の運転手さんにお願いして引き取ってきてもらうんです。帰りは荷台も空いているでしょうから」
なるほど、そんな手もあるのか! アイデアもすごいけど、それを実行にうつす竹内さんの行動力がなによりすごいです。

信州野菜のおいしさを県外客へ伝えるためPAで野菜を販売
余剰品や規格外など、廃棄する予定だったものを竹内さんが買い取ってくれるので農家さんにとってもありがたく、まさにWinWinの関係。現在では、多くの農家さんが竹内さんの活動に賛同し、100件以上の農家さんと提携しているそうです。
「今日は病院行って薬もらわないといけないからっておいじいちゃんが連絡してくるんです。じゃあ代わりに収穫しておくね、なんてことも日常茶飯事(笑)」
そんな竹内さんの人柄が、多くの農家さんの信頼を得て、現在の関係性を築いたのですね。
彩のワケあり野菜は小黒川パーキングエリア下りの野菜売り場でも購入可能です。
下りは名古屋方面へ帰る車が立ち寄る場所なので「信州の野菜のおいしさを県外の人にも伝えていきたい」と竹内さん。形や色は少し劣っても味は一級品の野菜をお得に購入できるので、必ず立ち寄るというリピーターも多いそう。

辰野町にあるカフェでは野菜たっぷりのランチを提供
この日は辰野町にある「カフェ&デリ ベジとテーブル」でお話を聞きました。お米や野菜などの農産物、ジャムや調味料などの加工品などを販売するマーケットで、カフェでは野菜をふんだんに使ったランチやドリンクやスイーツなども楽しめ、お弁当やお総菜などテイクアウトも充実。キッズスペースもあるので、親子連れにも大人気のお店です。
「こちらのオーナーも、辰野町の野菜と経済を循環させたいという同じ思いを持っている方なんです。野菜を上手に使う方なので、何を食べてもおいしいですよ」と竹内さん。この日、わたしはスープカレーをいただきましたが、野菜たっぷりで栄養もボリュームも満点。お総菜も買って帰りたいものがたくさんあり、近くにあったら毎日通いたいほどすてきなカフェでした。

彩が仕入れた野菜は市内の介護施設や総菜店などにも卸しています。
「介護施設は野菜をたくさん使いますし、高齢の方からは特に『旬を感じられるものが食べたい』というニーズがあるので、その時々にとれる季節野菜を持っていくととても喜んでいただけますね」
「これも食べてみて」と浅漬けを出していただきました。「ブロッコリーの芯で作った浅漬けなんですよ。ほかの野菜もこうやって浅漬けにすれば捨てる部分なんてなく、ぜんぶおいしくいただけるんですよ」
竹内さんは野菜を送るときに「おいしい食べ方」のメモやレシピなどを書いて一緒に送ってあげているそう。
引き取り発送だけでなく、困っている農家さんのお手伝いもするし、消費者のためにレシピまで考えている竹内さん。販売している野菜も破格とあって、手間を考えるとビジネスとしてやっていけるのかと心配になってしまいますが…。
「大丈夫ですよ(笑)、ちゃんと考えてやっていますよ~」と笑って話しますが、いやいや、やっぱり農家さんのことを思いやる気持ちと情熱を持った竹内さんだからこそできることなんだと思います。
では我々は、我々にできることで応援!
農家さんが丹精込めてつくった野菜をできるだけ無駄にせず、規格外野菜を買って応援。葉っぱや根っこも浅漬けやスープにすれば廃棄もゼロに。信州の未来が豊かになるために、身近なことからしあわせバイを実践していきましょう♪
■彩(いろどり)
https://irodori-shinshu.com/
■HELAS(ヘラス)
https://helas.jp/