シカ肉のミートパイと1,000冊の古本。湯田中温泉街に生まれたフランス料理店「やまブイブイ」@山ノ内町

「フランスに長野県出身の友だちがいたことをきっかけに、1か月間長野県内を回って山ノ内町に決めました」――そんな縁から生まれた一軒の食堂が、湯田中温泉街に新たな風を吹き込んでいます。

「山の気候が、肉を干すのに適している」――山ノ内町を選んだ理由

長野県山ノ内町の湯田中駅近くに、2024年9月にオープンしたフランス料理店「やまブイブイ」。この店を営むのは、フランス出身のジャン=パコム・ドゥデューさんと、神戸出身の黒田七生(ななお)さん夫妻です。

山ノ内町に店を構えた決め手のひとつが、フランス料理の加工品「シャルキュトリー」との相性でした。ソーセージなどの肉加工品であるシャルキュトリーは、肉を干す工程が欠かせません。七生さんは「山の気候が、肉を干すのに適しています」と語り、自然豊かな環境を求めて日本各地を探した末に、この地にたどり着いたといいます。

「パン以外は、ほとんど手作り」――地元食材への真摯なこだわり

店内はカジュアルで親しみやすい雰囲気に仕上げられており、カラフルな色合いも目を引きます。料理へのこだわりは、食材の選び方にも表れています。七生さんは「おいしくて安心できる素材で、家庭的なフランス料理を楽しんでもらいたいので、野菜やお肉は地元のものを中心に選んでいて、パン以外はほとんどを手作りしています」と話します。

看板メニューのひとつが、シカ肉のミートパイ。地元で獲れたシカ肉を赤ワインとともにオーブンで焼き、ネギとキノコのソテーにネギのバタークリームを加えて、パイ生地で包んだジビエ料理です。

「皆さんに馴染みのあるお料理と、食べたことがないようなお料理を、どちらもバランスよく提供できたらいいなと思っています」という七生さんの言葉には、初めてジビエに挑戦する方への温かな配慮が感じられます。

約1,000冊の古本も販売――食と本が共存する空間

料理を楽しむだけにとどまらないのが、「やまブイブイ」のユニークな点です。店の奥には、現在およそ1,000冊の古本を販売するスペースが設けられており、食事と合わせて本を手に取ることができます。

七生さんはかつて古書店や編集プロダクションで働いた経験があり、本への関心は深いといいます。蔵書のほか、近所の人が持参した本や、空き家を手放す人から買い付けた本もあり、地域の記憶が本棚に積み重なっているようです。「これからは古本の買い取りにも力を入れていきたい」と語っており、今後さらに選書が充実しそうです。

写真展も開催予定――「様々な人が行き交う、開かれた場所に」

食と本に加え、写真家が昨年湯田中で撮影した写真の展示など、アートの発信地としての一面も持ち始めています。

七生さんは「フランス料理のお店としての営みを軸にしながら、この場所のすべてを生かして、さまざまな人が行き交う開かれた場所に育てていきたいと思っています」と、この店の未来像を語っています。フランス料理・古本・アートという三つの顔を持ちながら、湯田中という地で新たなコミュニティの核となることを目指しています。

地元の食材を使った家庭的なフランス料理を味わいながら、古本を手に取り、地域の空気を感じる——湯田中温泉を訪れた際には、ぜひ「やまブイブイ」に立ち寄ってみては。

やまブイブイ
住所 長野県下高井郡山ノ内町平穏2936-56
営業 18時〜22時 (21時半L.O.)
定休日 火曜・木曜
Instagram https://www.instagram.com/yamabouiboui

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