松本城二の丸にあった旧施設の休館から2年。「松本市立博物館」が10月7日(土)、三の丸に舞台を移し満を持してオープンします。
新施設のコンセプトは「交流と活動の拠点となる、まちとつながった博物館」。
ここを訪れた人が松本市、ひいては長野県のことについて考えるような施設を目指しているのだそう。
“まちのことを考える”とは、一体――。
「松本市立博物館」は3階建て。1階に子ども向け展示室やカフェ、ミュージアムショップ、2階は特別展示、最上階の3階が常設展示のフロアとなっています。
3階の常設展示室は松本地域ならではの伝統や文化、魅力を8つのテーマにセグメントして展示。テーマ毎に特色ある展示を楽しめます。
主に江戸や明治など、現代社会に近い文化や生活のコミュニティを形成するようになった頃からの魅力を伝えているあたり、県内でも随一の文化都市と言われる松本らしいユニークさを感じます。
縄文、弥生時代から満遍なく紹介するのではなく、こういった内容にフォーカスすることで現代社会との比較がしやすく、まさに前述したような館内を巡りながら“松本市のことを考える”そんな展示になっているのではないでしょうか?
歴史や文化など堅苦しくなりがちなテーマも、現代人目線で解説してくれているので、読んでいて楽しい!
フロアのレイアウトも、空間ごとの仕切りがほとんどなく開放的。そのため展示物の配置もダイナミックで躍動感があり、見ていてワクワクする感じが素敵です。
フロア内にある休憩スペース「探求の井戸」。ここに設置されているベンチの中心には松本、長野どちらかの市民であれば、思わずクスッとしてしまうローカルネタが、まるで水面に浮かぶようにデザインされています。
一見自虐とも捉えられかねないセンテンス。「多岐にわたった松本地域の魅力や素晴らしさといったナショナルで華々しい展示の中に一箇所くらい、ミクロな視点で『一個人から見た松本』のようなプライベートな展示があれば、館内散策の良いクールダウンになるのでは」そんな意図があるのだとか。
ぜひ、探求の井戸にある文章を読み、地元をより身近に感じながら、ひと休みしてください。
展示を目で見て知り、松本市の魅力を再発見。改めて、外に出て松本市を巡りたくなったでしょ?って投げかける出口のデザインもさすが。
さて、階段を降りると2階は特別展示室です。
こちらではオープン当日より開館を記念した特別展「まつもと博覧会」が開催中。特別展も常設展と同じように松本市のことを考える内容になっています。
特別展のタイトルは、明治の頃、実際に松本城を会場に開催されていた「松本博覧会」からインスパイア。その当時、万国博覧会をはじめ、世界各国で空前の博覧会ブームが起こっていたのだそう。それに倣うように筑摩県(当時の松本地域)でも博覧会が行われ、明治6年(1873年)の開催以降、年に1回以上のハイペースで開催されていました。
展示では、かつての松本博覧会の開催内容や出品物を紹介。時代とともに変化していった博覧会の様子などを垣間見ることができます。
そして、後半では「EXPO MATSUMOTO」と題して、松本の特産品や産業を展示。「現代、松本博覧会が開催されていたら、こうだろう」そんな松本PRIDEをヒシヒシと感じる展示ばかりです。
後半のスタートでは松本地域を代表する「EPSON」でも世界シェアトップを誇るプロジェクターと巨大スクリーンが出迎えてくれます。
写真だと伝わりにくいんですが、この湾曲したスクリーンの中央に立って映像を見るとまるで3Dのような没入感を体験できます。
そのほかにも、世界の有名ミュージシャンからも愛されるギター、美容室シェア全国トップクラスを誇るドライヤーなど、旧来の博物館ではおおよそ展示されることはないであろう現役バリバリの工業製品も展示され、今の松本の素晴らしさを感じることができます。
この企画展のレイアウトを担当したのは、同館のアソシエイト・プロデューサーを務めるおおうちおさむ氏。都内を中心にグラフィックデザイナーとして活躍し、松本市では市内のノスタルジックな建築物を会場にアートを展示する「マツモト建築芸術祭」の総合ディレクターや人気レストラン「ヒカリヤ」のアートディレクションを手掛ける同市とも関わりの深い人物です。
今回の特別展・松本博覧会のアートワークもおおうち氏によるもの。空間も含めた立体的なディレクションを得意とする同氏ならではの色彩豊かなプロップスを用いた空間の魅せ方は圧巻。一見の価値ありです。
3階、2階と松本地域の歴史や文化を学び、大人目線で魅力を再発見してきましたが、1階には子どもの視点で遊びながら学べる「子ども体験ひろば アソビバ!」があります。
ここは子どもが遊びながらさまざまなことを学び体験できる場所。ままごと用の木製のキッチンには長野県ならではの食材(実物ではない)が用意されていたり、においを嗅いだり、音を聴いたりできるおもちゃがたくさん用意されています。
木製のボールプールには松本手毬もまぎれていて、子どもとフォトジェニックな写真が撮れそう。
ちなみに、空間に描かれているかわいいイラストは松本市在住で全国誌の挿絵なども手掛ける古荘風穂さんが担当。スタンプセットももちろん古荘さんのイラストです。
また同フロアには松本市の人気ロースタリー「High-Five COFFEE STAND」も出店しているので、博物館の利用ばかりでなく、ちょっとした市街地散策のハブにも良さそうです。
ざっと紹介しただけでも魅力たっぷりの松本市立博物館。まだまだ新築のいい香りがするので、ぜひ足を運んでみて。
長野県松本市大手3-2-21
●電話番号
0263-32-0133
●営業時間
1F/9時~21時
2・3F、子ども体験ひろばアソビバ!/9時~17時
●定休日
1F/毎月第3火曜日(祝日の場合は翌平日)
2・3F、子ども体験ひろばアソビバ!/毎週火曜日(祝日の場合は翌平日)
1・2・3F共通/年末年始(12月29日~翌年の1月3日まで)※臨時休館あり
●常設展観覧料
【個人】大人(18歳以上):500円、大学生:250円、高校生以下または18歳未満:無料
【団体(20名以上)】大人:400円、大学生:200円
●特別展観覧料
【大人】:1,000円、大学生:600円、高校生以下高校生以下または18歳未満:無料
【団体(20名以上)】大人:800円、大学生:400円、高校生以下または18歳未満:無料
●常設展+特別展観覧料
【大人】:1,200円、大学生:800円、高校生以下高校生以下または18歳未満:無料
【団体(20名以上)】大人:1,000円、大学生:600円、高校生以下または18歳未満:無
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