
長野県諏訪市を拠点に、観光土産の開発や卸を手がける有限会社キサラギ。現在の代表取締役・小島寿弘さんのご両親が1995年に創業。2025年に30周年を迎え、映画『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』とのタイアップ商品を企画するなど、話題性ある取り組みも展開しています。
今回は、県内産素材を生かした自社製品開発の経緯や今後の注目商品などについて、小島さんにお話を伺いました。

卸売から商品開発まで。信州の魅力を形に
観光土産の卸売業を主に八ヶ岳エリアで展開してきた有限会社キサラギ。コロナ禍は大きな転換期となり、卸売だけでなく自社開発商品にも取り組むようになりました。
「観光客が一気にいなくなってしまい、さてどうしようかと。数ある土産品の中から選んでいただくにはどうしたらいいのかを考え、自社で一から商品を作ってみることにしたんです」と小島さん。
苦労したのは、開発した商品を製造してくれるメーカー探し。
「端から端まで探して連絡をとりました。内容によっては県内企業では作れないものもあり、県外にお願いする場合もありました」
こうして初めて商品化されたのが「八ヶ岳牛乳シリーズ」。八ヶ岳の牛乳を使ったクッキーやドーナツ、ワッフルをはじめ、さまざまな土産菓子を展開。ドーナツは松本の渡辺製菓が製造を担当しています。
サクサクと軽い食感が特徴のミルクキャンディは、食べ終わった後も缶をとっておけるデザインが好評。映画『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』とのタイアップ商品にも選ばれ、話題を集めました。

水も具材も“信州産”にこだわった2つのそば
長野県土産といえば「そば」もはずせません。同社では現在、2種類のそば商品を展開しています。
ひとつは信州産のそば粉を使ったそばに信州産のなめ茸を組み合わせた「なめ茸そば」。まさに地産地消を体現した商品です。
「半生タイプなので、温かくても冷たくてもおいしいです」と小島さん。開発の際には「野沢菜にするか、なめ茸にするか」と迷ったものの、マーケティングの結果「なめ茸の方がいいね」と決定。なめ茸はパウチ入りで、茹で上がったそばにそのままのせれば完成という手軽さも魅力です。
もうひとつは「水にもこだわった信州そば」。なんと、小島さん自ら八ヶ岳まで天然水を汲みに行き、その水を製造している信濃町の池田商店へ送って作ってもらっているとのこと。
「そば粉をたっぷり使っているので、そば本来の風味をしっかり感じられる商品です」と小島さん。おいしいそばは“おいしい水”からというだけあって、素材だけでなく水にまでこだわる姿勢が、信州そばの奥深さをさらに引き立てているといえそうです。

信州リンゴを生かしたノンアルビール
信州リンゴの果汁を使ったノンアルコールビールは、爽やかなフルーティーさが魅力の一品。ビールのような飲みごたえと、果実ならではの軽やかな風味が楽しめるため、幅広い世代に受け入れられています。有名YouTuberの動画でも紹介されたそうで、話題性も抜群。ノンアルコールなので車の運転前でも安心して味わえ、諏訪のサービスエリアなどでも購入できる手軽さも好評です。
さらに、山梨からも近い立地を生かし、桃を使ったバージョンの開発も進行中。
「長野県は果物の生産地なので、今後もシャインマスカットなど、地域の恵みを生かした商品をいろいろ展開していきたいです」
地域の果物を生かした新しい土産品づくりは、観光客にとっても楽しみのひとつになりそうです。

年間に2~3種類ほど新商品を開発する同社。現在、自社で開発した商品は約20種類にのぼり、今後はさらに自社開発に力を入れていきたいと小島さんは語ります。
「市場にはすでに多くのお土産が並んでいます。その中で何を選んでいただけるかを考え、何かおもしろいものを作れないかと常に考えています」
現在、開発中なのは、県内の有名な飲食店とのコラボ商品。
「まだ詳しくはお伝えできませんが、順調に進めば年明けにはお披露目できそうです」
お土産は旅の記憶を持ち帰るもの。
長野県を訪れた人が「こんな商品があった」「やっぱり長野といえばこれだよね」と感じてもらえるように。観光地だけでなく、長野の魅力そのものをお土産を通して伝えていきたい――。そんな小島さんの思いはまさに“しあわせバイ信州”とつながっているといえそうです。
■購入場所
土産店、諏訪湖サービスエリア、Aコープ(茅野、富士見)、蓼科自由農園ほか(一部の商品)
■有限会社キサラギ
TEL:0266-58-0687